Wang Yi, Graduate School of Human Cultures
Study Abroad in Japan ; Through the Eyes of a Chinese Student
Wang Yi, Division of Life Style Studies
滋賀県立大学で学び、服飾デザインの新しい価値を探る留学生活

私は2019年の10月に滋賀県立大学の研究生として入学しました。その前は中国の湖北美術学院で4年間、服飾デザインを専攻していました。子どもの頃から日本のアニメや音楽番組をよく観ており、日本文化に深い興味を持っていました。大学時代に日本のファッション文化を学ぶうちに、1970年代以降、日本から世界へ羽ばたいた多くのデザイナーの存在を知り、いつか日本でファッションを学びたいという夢を抱くようになりました。
留学先の大学を調べる中で出会ったのが、滋賀県立大学の生活デザイン専攻でした。特に森下研究室では、美しく快適な生活をもたらすための服飾デザインに関する研究を行っており、単にキレイな服を作るだけでなく、「着るヒト」の視点から衣生活に関する問題を調査しながら、服飾デザインの新しい価値を模索することを重視しています。このような、今まで考えたことのなかった視点に強く惹かれ、この大学で新しい知識を習得したいと考え、留学を決意しました。
入学資格を満たすため、大学を通った時に日本語能力試験N1を合格し、TOEFLでも84点を取得しました。これなら日常生活には困らないだろうと思っていましたが、実際に滋賀県立大学で勉強を始めると、日本語で文章を書く力の不足に大変苦労しました。修士課程への進学のために、指導教官である森下あおい教授のご指導のもと、論文を読み、新聞記事を要約するなど一年間の努力を重ね、1年後の2021年4月に無事に修士課程へ進学することができました。

しかし、新型コロナウイルスの影響で、なかなか対面授業や交流が制限され、他人との繋がりが少なく、孤独を感じる日々もありました。このようなつらい時期の中では、森下教授や研究室の仲間たちとオンラインで話し合いながら励まし合い、研究を続けることができました。今振り返ると、その経験が自分を大きく成長させてくれたと深く感じています。
また、修士課程の中では、興味のあるファッションデザイン画に関する研究を進める一方で、研究室の活動として、EWC(エン・ウィ・クル)主催の繊維製品アップサイクルイベントや、日本のプリント服地の産地、京都から発信するイベントとして「メイキング・ワークショップ」KPAにも積極的に参加しました。さらに、基礎服飾デザインの授業でTAを務めた経験を通して、「教えることの楽しさ」を感じ、将来教育の道にも関わりたいという思いを抱くようになりました。この夢を叶えるためには、さらに勉強して知識を深めないといけないと思いつつ、博士後期課程に進学することを決めました。
博士課程では、学会発表や研究活動に加え、研究室活動として地域との連携プロジェクトにも参加しました。2024年10月20日に開催された「まちを元気にする」プロジェクトMAIBARA 2024 OBACHANS' COLLECTION ~おしゃれも生き方もチャーミングに~では、55歳以上の女性たちの大切な思い出が詰まった捨てられない洋服をリメイクし、ファッションショーを開催しました。このイベントでは、体型や年齢、体の事情などで何十年も着ることができなかった大切な服を、再び着られるようにデザインし直す作業に関わって、多くの「おばちゃん」たちと交流を深めました。リメイクされた服を身にまとい、自信に満ちた笑顔でランウェイを歩くおばちゃんの姿を見た瞬間、ここに来て本当によかったと心から感じました。

また、2025年の国民スポーツ大会では、滋賀の四季をテーマにした「おもてなし演技」衣装のデザインに参加しました。素材や色彩、テキスタイルにこだわり、「滋賀のやさしさ」を表現するために何度も打ち合わせを重ねました。完成した衣装を身につけた出演者がステージで踊る姿を見た時、胸が熱くなりました。さらに、2025年10月には「長浜kimono AWARDS」に出場し、伝統的な浜ちりめんを用いた作品を発表しました。着物と現代ファッションを融合させることで、伝統素材の新しい魅力を表現し、着物文化の多様性を実感しました。
現在は、博士論文の執筆に取り組んでおり、テーマは「服飾デザイン画に基づくファッション推移の分析―線画の意匠表現を通して見た1970年代から2020年代までのトレンド―」です。デザイン画を定量的に分析することで、これからのファッションデザインを支援する新しい可能性を探っています。
このように滋賀県立大学での生活は、私にとってかけがえのない時間です。自然に囲まれた穏やかな環境の中で、地域の人々や仲間との出会いを通して、多くの学びと発見を得ました。ここで学んだこと、出会った人々、そして積み重ねてきた日々のすべてが、私の一生の宝物となります。
(December, 2025)
